統計学は揺らぎを許容して振れ幅を示してくれる
現実は揺らぎのなかにある
僕なんかが統計学を語るのは100年早いと自負しているのですが、少しでも統計学をかじると物事が俯瞰して見えるようになると思います。
それである種の諦観を覚えたりするので、少し冷めてるように感じられることも多々あるのですが、そこにデータさえあれば大体のことは統計学に沿って説明ができます。
(その説明するための手法を学ぶのが大変なのですが…)
フライドポテトを考える
統計学入門としてよく聞く、フライドポテトの話があります。
うろ覚えで書くと以下です。(※下部に参考リンクあり)
問題です。フライドポテトが10本で20センチになりました。では、100本ある時全体の長さは何センチになるでしょうか。
A.200センチ
…と答えてしまうのは算数の世界です。
統計学はもう少し現実世界に即していて、「ポテト1本の長さが2センチである」ことが定義されない限り、1本あたりの長さに誤差が生じる可能性があると考えます。
実際に、ファーストフード店に行っても、ポテトの長さが均一なことはないですよね。
僕はファーストフード店で働いたことはないのですが、大量生産大量販売の商品を高速でさばくと考えた時、基準と成り得るのは1パッケージあたりの「重さ」だと思います。
このようにオペレーションを鑑みると、1本1本の「長さ」の精度を求めているのは難しいのではないかと仮説を立てることができますね。
あとは実際の数字から証明していけばいいのです。
データ抽出後は検定かけてもいいし、偏差値求めてもいいしヒストグラムだして終わりでもいいしとやり方は色々あると思います。
物事を一元的に捉えてしまうのは危険だけど…
現実はこのような「揺らぎ」の中で成り立っています。
算数の考え方のように、一つの法則に対して、答えは一つといった一元的な成り立ちではないのです。
ビジネスの場で答えを一つに絞り込み、言い切ってしまう人がよくいます。
ある種ビジネス本では鉄則として語られている手法ですが危険な場合も多々あると思います。
金銭が絡む場合は特にそうで、誰もが損をしたくないと考えています。
もし過去に言い切った通りになったとしても、次にそのようになる保証はありません。
ましてや同じ要素が揃うことは機械と機械でもない限りほぼありえません。
ただ、統計学を用いて分析の精度をあげていく作業はキリがなく時間はいくらでもかけられるというのも事実です。
また、組織としてアナリストやデータサイエンティストが意思決定に携わっていることもまだまだ少ないといった背景から言い切りが良しとなってる側面はあると思います。
下振れはまずいが上振れは良しとなる
USJのハリーポッター誘致の例が最近だと有名な例かもしれません。
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簡略的に書くと、ハリーポッターの誘致にあたって、データサイエンティストの予測が最後の一押しとなり誘致したところ、結果としてそれを上回る集客に成功したというデータを使った意思決定の好例です。
ここで注目してほしいのは予測に対して「上振れ」していることです。
言葉選ばず言い換えれば、現実世界では「誤差」が生じたということですね。
著者の今西さんが、分析者として少し弱めの読みで意思決定者である同著者である森岡さんに提示したという旨を残しています。
森岡さんから直前に提案がありました。お互いに手のひらに信じている数字を書いて「せーの」で見せ合いましょうと。そして先述したその幅の中で思案した結果、本当の現実的な予測を220万と考えていた私は、手のひらに敢えて保守的で低めの「210万人」と書いたのです。そしてお互いに見せ合いました。彼の手のひらには太くはっきりと「240万」と書かれてあったのです。お互いにニヤッとしました。彼は「200万は固い」と踏んだのでしょう。
ここまでの過程で自分では到底扱えない数式や思考法が数多く使われています。
読んでいて勉強になりっぱなしでした。
それをおいても、どんなに精度高く分析をかけても現実という「揺らぎ」の中で最大最小の間で「振れ幅」が生じるということがわかったことが最も収穫だったかもしれません。
(同時に弱めに読むのって自分だけじゃないんだと安堵もしました。)
言い切るのもあながち間違いではないのかもしれない
言い切る姿勢のいいところは、必ず行動が生まれることです。
諦観した上でせせら笑っていても、何も行動は生まれませんし現実は変わりません。
どんなに時間をかけて分析しても外れる時は外れるというのは天気予報をみれば明らかです。
ただ、USJの例のように社運をかけた莫大な資金がかかる意思決定は統計の力を使って振れ幅を踏まえた上で実施有無の判断するのが望ましいかなと今は思います。
統計をかじり、現実の揺らぎを知ったからこそ思うことの一つです。
僕のちかくからは以上になります。
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