ちかくにまなぶ

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【書評】人工知能の核心

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人工知能の核心

最近藤井聡太四段の登場によって何かと話題の将棋業界ですが、僕の中ではやはり将棋の棋士羽生善治さんです。

羽生さんの著書はどれもわかりやすく、思考について学べるので愛読しています。その中で人工知能への言及が最近多くなっているの感じていたので本著の発売はとても楽しみにしていました。

人工知能の核心 (NHK出版新書)

人工知能の核心 (NHK出版新書)

 

 読み進める中で「学習の高速道路」という言葉が気になったので書いていきます。

 

学習の高速道路化

羽生さんはAIが普及するにつれて起き得ることとして「学習の高速道路」を挙げています。以下引用します。

もう一つ、私が重要だと感じているのは、「学習の高速道路」の問題です。 これはインターネットが登場した頃からよく話していることですが、本質的には将棋ソフトや人工知能についても同じことが言えるでしょう。 もし人工知能のプログラムを使えば、超高速で効率良く学習できるとわかったとします。すると今度は、誰もがそのルートで学んでいくはずです。「高速道路」が目の前にあるのに、わざわざ「一般道」を走る人は少ないと思うからです。

ただ、私が最も強く懸念しているのは、この「学習の高速道路」を走るなかで、大量の情報を得ることに追われて、かえって自分の頭で課題を解決する時間がなくなっていくことです。 実のところ私は、今の若い棋士たちの、未知の局面に出合ったときの対応力が少々落ちている気がしています。 

学習にあたり、近道をするということが果たして本当にいいことなのかという問いを羽生さんはここで投げかけています。

要は、皆が皆最適化された道を歩むことで生じる弊害はないのか?ということです。

これは個人的にもここ数年よく感じることで、結局百戦錬磨のベテランの域にはショートカットして学んだ自分の知識ではかなわないということがよくあります。

かなわないといっても全部が全部できないわけではありません。なんなら大枠に関してはほしい結果に対して、文明や技術さえ進んいればできてしまいます。

差が生じるのはどちらかというと細部なのです。

 

百戦錬磨のベテラン

この記事にとても共感しました。

fromdusktildawn.hatenablog.com

何文か引用します。

新しい技術、新しい分析手法、新しいビジネス手法、新しい開発手法、新しい経営手法のほとんどは、まるっきりゼロから生まれるなんてことはなく、たいていは巨人の肩の上に生まれる。そして、すでに何十年も掛けて巨人の肩の上によじ登り終わったおっさんは、ほんのちょっと手をのばすだけで、すぐに新技術の果実を掴み取れる。これに対してまだ巨人の肩の上に乗っていない若い人は、そもそも巨人の肩の上によじ登るところから始めなければならない。彼らにとって、新技術は、気の遠くなるような彼方にある。

それに、そもそも「技術はすぐに陳腐化するから、おっさんの知識は古くて使えない」というのは、半分本当だが、半分はウソだ。陳腐化してゴミになる知識もたくさんあるが、陳腐化せずに蓄積していく知識も膨大にあるのだ。「いまからシステム開発を始める若い人は、RDBオブジェクト指向デザインパターン正規表現、並列プログラミングなどという時代遅れの知識を学ぶ必要はない」とはならない。

それどころか、むしろ、既存技術を深く理解して使いこなしている人の方が、新技術をきちんと理解し、うまく使いこなすことは珍しくない。NoSQLが流行りだしたとき、それがはっきり現れた。RDBを十二分に使いこなし、そのメリット・デメリット・限界を知り尽くしている人間の方が、NoSQLの意味を素早くかつ的確に理解したし、効果的に使いこなせていた。RDBの理解が浅い人間の方が、そもそもなぜ、どんなところにNoSQLを導入すべきかを見誤ることが多かった。

例えば、家を建てるにしても、石から削って建てる人とお家キット(そんなものないけど…)を使った人では、身につくスキルの幅が違います。

お家キットを利用した人は時間軸の近道はできるものの、いつまでもオリジナルの家を建てられませんし、キットの外の指示が来た時に応用が効かなくなります。

これは自分にも当てはまることで、分析の際、先達のRのコードは使えますが、何かで詰まると解決までものすごく時間をロスしてしまいます。

これは何故この成り立ちでコードが成り立っているかを理解しないまま、作業をすすめているためです。

巨人の肩に手が届いているのではなく、所詮巨人の手のひらに転がされているのです。

 

学習の一般道をあえて走る

結局ビジネスの現場でこういうことが起きてしまっていると考えると、羽生さんの考える「学習の高速道路」化という問題は既に起きていると言えます。

神は細部に宿るとよく言いますが、日々学習し先人の知恵に少しでも近づかないといつまでもその場しのぎに流行り言葉に流される一方だと思う今日この頃です。

自分の場合、ちゃんと数学とプログラミングを一般道から勉強しなさいよってことですね。とほほ。

 

 

僕のちかくからは以上になります。

人工知能の核心 (NHK出版新書)

人工知能の核心 (NHK出版新書)

 

chikakuni.hatenablog.com