消費者は崇高な存在ばかりではない
学問的な正しさと商業的な正しさは必ずしも一致しないなと思うことが多々あります。
学問的な正しさとは教科書的に伝承されている理論に沿うことで、商業的な正しさはシンプルに売上増加を指すとします。
マニュアル通りに指しても商売では必ずしも勝てないよねってことですね。
僕はよくコインランドリーを利用します。
今住んでる家のベランダは午前中で日照りが終わってしまい朝寝坊さんの自分には乾燥機が必須です。
なので家から2分ほどの距離にあるコインランドリーの乾燥機を重宝しています。
乾燥機付きの洗濯機買ったほうが安い気もしますが、粗大ごみとなる大型家電はなかなか手が伸びませんね…。
乾燥一回に対して300~400円消費します。300円だと湿り気を感じ、400円だとこんなに必要だったかなと思うなんとも微妙なラインです。
なのでコインランドリーに行くたびに複数の百円玉が必要になるのですが、そのコインランドリーには両替機がありません。
手元に百円玉の用意があれば問題ないのですが、毎回毎回となるとそうもいかずこれは結構不便です。
それで手軽に崩せないかなーと見回すと、自販機が入り口にあるんですね。おそらく経営もコインランドリーの方がしているのでしょう。
毎度毎度こんなん置くなら両替機置けよと思うのですが、文句も言ってられずそこでジュースを買ってしまいます。
経営者的にはユーザーの利用あたりの売上が120~150円上がるわけですから美味いもんです。
コインランドリー経営者的にはビジネスのセカンドチャンスですが、ユーザー的には不便につながるというわけですね。
これは学問的な正しさでいうとNOと言われる手法です。
一般的には「ユーザーの満足度を最大化してファンになってもらう。そうすることで生涯生産を高める」のようなことが述べられます。ユーザーが嫌がることに対する将来的な損失を考えましょうということですね。
この理論は勿論正しいのですが、このコインランドリーの場合は異なります。自分の行動を鑑みると何度もこのコインランドリーに通っているのです。
両替機がないことによって利用を辞めるユーザーも勿論いると思います。ただ、この場合は地の利が物を言う気がします。
現に他のコインランドリーは近所にあります。さらにいうと今通っているコインランドリーよりも清潔感があり、両替機もあります。ただ、そこは徒歩8分と4倍の時間がかかってしまいます。そうなると「まいっか」という気持ちでいつものコインランドリーに足が向いてしまうのです。たかだか120円程度の不便は習慣に勝てないということですね。
このように単価が低ければ低いほどに「まいっか」の精神は働きます。迷いは金銭的な重みが小さければ小さいほど小さくなるのです。そうなると両替機を置かず、自動販売機を置いたほうが良いという算段になりそうです。塵も積もれば山となる。
顧客の満足度を高めるのももちろん重要です。ただ、商材利用の過程までに生じる「迷い」の大きさを考慮した上で適切に施策を打たなければ、ひょっとすると損につながることもあるかもしれません。
僕みたいな「まいっか」がまかり通る消費者は学者さんが考えるほど崇高じゃないのかもしれませんね。
僕のちかくからは以上になります。
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