ちかくにまなぶ

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【読書感想】敗者復活のうた。

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敗者復活のうた。

敗者復活のうた。

  • 作者:劔 樹人
  • 発売日: 2021/02/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

あらすじ

過去インディーズでいいとこまでいった主人公がバンドを捨て、中年サラリーマンになった。家族がいて社会人としての生活も保障されている。それでもただ漠然とある何かが物足りないという気持ち。欠けたピースを埋めるためにまたバンドを始めることになった。奮起するもなかなかうだつが上がらない。アーティスト気質なヤバい奴、バカにしてた社会人バンドをやる仲間、過去の自分と今の自分への葛藤、そして再会するかつての仲間達。フジロックにでることを夢見たおっさんのたどり着く答えはー。

読書感想

先に言っておくとこの物語の結末はすっきりしない。少年ジャンプに毎週ワクワクする少年達にこの漫画はおすすめできない。作者も自身で公言しているが、壊滅的に絵も下手くそだ。ただ思い出してほしい。若い頃僕らの心をかきむしったギターは決して上手な演奏ではなかった。

作者は神聖かまってちゃんをプロデュースした劔 樹人。あらかじめ決められた恋人たちのベーシストでもあり、現在公開中の映画「あの頃」の著者でもある。自身が音楽の現場に長年身を置いてきたからこそ「音楽を続ける」というテーマへのリアルを描き出している。

大人になると学生時代打ち込んでいたものから距離を置かなければならないときがくる…なんてこと書く大人に僕だってなりたくなかった。自分だったらバスケットボールがそうで、あの理不尽に顧問の先生に殴られて、いつ終わるかわからない罰走をさせられて、一生懸命打ち込んでも全然うまくならなくて、それでもバスケットが好きだという気持ちは変わらなくて。あの日々はなんだったのかと時々考える。バスケットへの気持ちは永遠に片思いだった。

社会人になってからだってそうだ。自分は大手企業からキャリアを始めることは叶わなかった。それだったらベンチャーのスタンプラリーを全部回ってみたかった。組織をでかくして、自分のチームをもって、ストック・オプションを手にして一度上場してみたかった。

後者は周りの人達のおかげで想いを遂げた。でも何も変わらなかった。ドラマと違って人生はそこで最終回を迎えさせてくれなかった。恋愛モノだったら大往生の先に手にした恋人とキスシーンで終わるくらいドラマティックだったと思うのだけど。最終回がなかったからかその物語は自分から終わらせてしまった。そして敗者として、また新たな物語を始めるのだから人生ってのは不思議なものだ。

いつまでモラトリアムしてんだって自分でも思う。それでもこの漠然とした物足りなさを失ったら自分は終わりだと思う。そう考えると本作の主人公の最後の決断を僕はまだ許容できてないのかもしれない。でも自分が生きる今はバンドで言うライブなのだからもう少し頑張ってみようと思う。本旨と異なるかもしれないけど僕はこの物語から勇気をたくさんもらった。

どんなにみっともなく足掻いていい。倒れたっていい。辞めたっていい。また始めてもいい。たまにいいことがあるかもしれない。チャンスもくる。モノにできることもあればできないこともある。それに気づかないことだってある。それでも死ぬまで自分の人生は続いてしまう。そう、ロックンロールは、鳴り止まないのだ。

僕のちかくからは以上になります。

あの頃。 男子かしまし物語

あの頃。 男子かしまし物語